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FX10 スーパーコンピュータシステム「大規模 HPC チャレンジ」採択課題

2016年度 採択課題決定

 このたびは、お申し込みをいただきどうもありがとうございました。以下の基準による厳正な審査のうえ、課題採択をさせていただきました(順不同)。

  • 自作コード、またはオープンソースプログラムによる研究であること。
  • 当該コードについて、1,000 コア以上の利用実績があること。または、センターで実施してきた、「512 ノードサービス」「512 ノード利用大規模 HPC 研究」での利用実績があること。
  • 計算結果が科学的に有用、あるいは社会的なインパクトがあると考えられること。
  • 本センターの運用、ユーザーにとって有用な情報を提供すること。
  • 4,800 ノードの利用を目標としていること。
  • 計画に実現性があり、短時間で効果を示すことが可能であること (一回の利用期間は最大 24 時間)。

第1回採択課題

課題名 並列多重格子法ソルバーの最適化および性能評価(その 2)
代表者名(所属) 中島 研吾(東京大学情報基盤センター)
連立一次方程式の反復解法,前処理手法としての多重格子法は,問題規模が増加しても収束までの反復回数が変化しないスケーラブルな手法であり,大規模問題向けの解法として注目されている。並列計算においてもその効果が確認されている。本研究は 2 つのフェーズに別れている。第 1 フェーズはLinpack に代わるスーパーコンピュータシステムの新しい性能評価ベンチマークとして提案されている HPCG(https://software.sandia.gov/hpcg/)のチューニング及び性能計測である。HPCG は三次元ポアソン方程式を差分格子のような規則的形状において有限要素法によって離散化して得られる疎行列を係数とする連立一次方程式を幾何学的多重格子法前処理による共役勾配法(Conjugate Gradient Method preconditioned by Geometric Multigrid)を使用して解くベンチマークである。既に 2014 年 10 月に本 HPC チャレンジでHPCG の性能計測を実施しているが,今回は 2015 年 11 月に公開されたHPCG Ver.3.0 の計測を実施するものである。第 2 フェーズは申込者がこれまで実施してきた幾何学的多重格子法前処理による並列共役勾配法における通 信 手 法 削 減 に 関 す る 研 究 で あ る 。 申 込 者 の 開 発 し た hCGA 法(Hierarchical Coarse Grid Aggregation)における通信手法,行列格納手法を更に改良し,計算を実行し,性能を計測する。

課題名 大規模コードクローン解析のためのスーパーコンピューティングに関する研究
代表者名(所属) 鵜林 尚靖(九州大学システム情報科学研究院)
近年、大規模なソースコード群に対してコードクローン解析を実施する需要が高まっている。コードクローンとはソースコード上に散在した似通ったコード片である。クローン解析はプログラミングプラクティス発見やコード盗用防止等に役立つ。一方、コードクローン解析には膨大な計算機資源が必要となる。高速にクローン解析するには解析対象のコード群に関する全情報をメモリ上にストックしておく必要があり、かつ計算が NP 完全な難しい問題だからである。この問題を解決するために、スーパーコンピュータ FX10 を利用する。我々は大規模コード群の一例として Apache の全 Java プロジェクトを解析しようと試みている。試算では、199 ノードを 17 日間使う事で Apache の全解析は可能である。従って、仮に 4800 ノードを 24 時間利用出来れば Apache の全解析が 1 日未満で終了する事となり、研究結果として大きなインパクトとなる。

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第2回採択課題

課題名 ADVENTURE_Magnetic による100 億自由度数値人体モデルの高周波電磁界解析
代表者名(所属) 武居 周(宮崎大学工学教育研究部)
ADVENTURE プロジェクトでは,数万ノード規模の超並列計算機環境において 1,000 億自由度規模の大規模電磁界解析を行うことを目的に,並列電磁界解析ソルバ ADVENTURE_Magnetic の開発を進めている.またソルバの開発と平行して,1,000 億自由度規模のデータをハンドリングするためのプリポストの整備もすすめている.本研究開発では,FX10 を 4,800 ノード用いて,100 億自由度規模の数値人体モデルの解析を実施してソルバの並列性能を評価するとともに,大規模電磁界解析における課題を抽出し,今後の研究開発に役立てていく.将来的には電磁波を用いた癌の温熱療法の効果を定量的に評価するシステムの研究開発へつなげてゆくことを考えている.

課題名 計算・通信とオーバーラップによる並列多重格子法ソルバーの最適化および性能評価
代表者名(所属) 中島 研吾(東京大学情報基盤センター)
連立一次方程式の反復解法,前処理手法としての多重格子法は,問題規模が増加しても収束までの反復回数が変化しないスケーラブルな手法であり,大規模問題向けの解法として注目されている。並列計算においてもその効果が確認されている。申込者は,コア数が増加した場合,特に粗いレベルにおける通信の改善のために hCGA 法(Hierarchical CGA)を提案し,Oakleaf-FX 4,096 ノードを使用して高いスケーラビリティを得られることを示し,内外で高い評価を受けてきた。本提案では, 行列ベクトル積・前処理(ILU)部に計算 ・ 通 信 の オ ー バ ー ラ ッ プ 導 入 に よ る 更 な る 最 適 化 と と も に , HID(Hierarchical Interface Decomposition)を導入し,収束の安定化を図るものである。計算・通信のオーバーラップには〔Idomura 2014〕等に基づき,OpenMPの動的スケジューリングを導入する。

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第3回採択課題

課題名 Volume Penalization 法を用いた複雑形状を有する楽器まわりの流れと音の厳密解予測への試み
代表者名(所属) 横山 博史(豊橋技術科学大学 機械工学系)
楽器内部では空間スケールの異なる流れと音が相互作用することで, 音が発生する. アルトリコーダーでは, 渦スケールは 1mm 程度, 音波の波長は低音の場合 1000mm 程度であり, 1000 倍程度スケール が異なる. 楽器内の流れと音の厳密解を求めるためには, 渦を解像で きるよう計算格子を細かくする必要があり, 大規模な格子を用いた長 時間の計算が必要となる. われわれは, 直交格子を用いることで高次精度差分を可能にし, 埋め込み境界法の一種である Volume Penalization 法により複雑モデル を再現し, 圧縮性 Navier-Stokes 方程式に基づき流れと音の厳密解を得る手法を開発してきた. 実際の楽器を短くしたカットモデルにおいては実験結果とよく一致する結果を得てきた. 本チャレンジでは 24 時間という制約の中で, 複雑形状を有する実際のフルモデルの楽器まわりの流れと音の厳密解予測の可能性を評価する. 4800 ノードの計算により, フルモデルの楽器を再現可能な約 3 億点の格子にて, 200 万ステップの計算が可能である.

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