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E-サイエンス若手・女性研究者シンポジウム2012

日 時: 2012年10月17日(水)10:00 ~ 18:20(懇親会:19:00~)
会 場:東京大学柏キャンパス第2総合研究棟 情報基盤センター 3階 315会議室 (地図)
参加費:シンポジウム参加無料、懇親会4,000円(懇親会のみ事前申込

開催趣旨

 本シンポジウムは、平成24年度E-サイエンス若手・女性研究者助成事業の採択者による成果発表、および東京大学情報基盤センタ-が実施する若手利用者推薦制度における平成24年度後期採択者の課題内容を紹介するシンポジウムです。

プログラム

開会

10:00 ~ 10:10 はじめに

石川 裕(東京大学情報基盤センター長)


10:10 ~ 10:40 HPCI の現状と今後の展望
石川 裕(東京大学情報基盤センター長)

概要:

 本年9月末から本格稼働した HPCI (革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)の状況と今後の HPCI を支えるスパコン開発を展望する。

若手・女性研究者支援プログラム成果発表

10:40 ~ 11:10 マルチスレッドプログラム向けユーザレベル遠隔メモリページングシステム
緑川 博子(成蹊大学 理工学部 情報科学科)

概要:

 ローカルメモリサイズを超える大きなサイズのデータを必要とするマルチスレッドプログラムを、遠隔メモリも利用して実行可能にするシステムを開発した。これにより、pthread、OpenMP プログラムや、マルチスレッド実装ライブラリを用いる逐次プログラムから、遠隔メモリを透過的に利用できる。今回利用した fnfiniBand クラスタにおける性能と、マルチスレッドプログラムに対応する実装上の難しさについても触れる。


11:10 ~ 11:40 医療用リニアックからの高エネルギーX線の水吸収線量標準の補正係数導出
清水 森人(独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門)

概要:

 外部放射線治療用線量計の校正に使用する高エネルギー X 線水吸収線量標準開発において、カロリーメータ線量計の補正係数の導出を大規模並列計算機を用いて行った。計算には電子線ガンマ線の挙動を計算する EGS5 コードを用いた。導出された補正係数を用いてカロリーメータによる線量測定を行ったところ、現在の水吸収線量標準によって構成された電離箱線量計の測定値と校正不確かさの範囲内で一致した。


11:40 ~ 13:00

昼休憩


13:00 ~ 13:30 超大規模系における高分子緩和モードの時間相関解析の HPC 効率化に関する検討
萩田 克美(防衛大学校 応用物理学科)

概要:

 本研究課題では、バネビーズ模型の粗視化高分子系の超大規模計算とその緩和モード解析における計算機科学(HPC)な視点での効率化・最適化について検討した。実際にうまくいったこと、(時間的制約も含めて)うまくいかなかったことについて、発表する。また、今回の課題実施で、計算科学的な成果を得るために、一部予定を変更して計算した、フィラー充填ポリマー系の計算結果について、概略を報告する。


13:30 ~ 14:00 高スケーラブルな MPI 通信基盤の実現に関する研究
吉永 一美(近畿大学工学部 電子情報工学科)

概要:

 エクサスケールコンピュータを実現するためのハードウェアとして、メニーコア混在型並列計算機を想定し、その上で動作する高スケーラブルな MPI 通信基盤ソフトウェアの設計を行った。PC クラスタ上に構築した擬似環境を用い、通信基盤ソフトウェアのプロトタイプを作成した。このプロトタイプを用いて、通信性能及びメモリ消費量の評価を行った。本発表では、その評価結果及び今後の通信基盤ソフトウェアの設計指針について報告する。


14:00 ~ 14:30 大気海洋境界のエネルギー流出入過程を詳細に解くモデルの構築
宮本 佳明(理化学研究所)

概要:

 大気中の多くの現象は海洋からのエネルギー流入によって駆動されるが、既存モデルではエネルギーの流出入を計算するスキームは精度が良くないことが知られている。近年、エネルギー輸送にとって海洋波の砕波過程が大きく寄与していることが分かってきている。そこで本研究では、砕波過程の影響を加味した大気海洋境界のスキームを構築することを目的として、まず基本部分の定式化を試みると共に、e-science クラスタを用いて準備的な実験を行った。


14:30 ~ 14:40

休憩


14:40 ~ 15:10 SACLA と大型計算機施設の融合利用による生体超分子構造解析に向けた実証実験
城地 保昌(高輝度光科学研究センター) 代理発表:杉本 崇(高輝度光科学研究センター)

概要:

 XFEL 施設 SACLA に期待される利用実験に、非結晶状態の生体物質構造解析がある。原子レベルの立体構造を解くには、生体超分子からの回折像を数百万枚取得する必要がある。このような大量データの解析には高い計算能力が求められ、我々は、「京」等の高性能計算機と連携したデータ解析基盤の構築を目指している。その開発状況および「京」利用のための技術検証として行った SACLA から e-Science 西拠点へのデータ転送試験結果を報告する。


15:10 ~ 15:40 降水によるエアロゾル除去過程のモデリング
清木 達也(理化学研究所 計算科学研究機構)

概要:

 本研究では降水によるエアロゾルの除去過程のモデリングの精緻化を行った。その一環として、従来の方法である大気中のエアロゾル質量に加え、雲粒内に溶け込んだエアロゾルの質量も予報する事で雲エアロゾル相互の物理メカニズムを詳細に記述する事が可能となった。ここではモデリングの精緻化による雲形成の改善点に加え、計算コストの増大や、計算コストのボトルネックを紹介する。


15:40 ~ 15:50

休憩


15:50 ~ 16:20 最適な力学コア開発を目指した正20面体格子気候モデルのモデル間比較
吉田 龍二(理化学研究所 計算科学研究機構 複合系気候科学研究チーム)

概要:

 次世代の高解像度気候実験を行うには、理学的視点はもちろん、計算科学の視点からもモデルを評価・改良しなければならない。そこで、NICAM (日本)、ICON (ドイツ)の2つの正20面体格子気候モデルを、この2つ視点から比較した。結果、NICAM、ICON ともに気候学的な性質は Reference によく合っていた。また、計算科学的なパフォーマンスとしてストロング・スケーリングを比較したが、ICON に比べて NICAM の方が理想に近いスケーリングをするが、より早くスケーリングが悪くなった。


16:20 ~ 16:50 次世代スパコン向けの軽量な仮想計算環境の実現に向けた研究開発
品川 高廣(東京大学情報基盤センター)

概要:

 申請者が研究開発してきた仮想マシンモニタ「BitVisor」を応用して、次世代スパコン向けの軽量な仮想計算機環境を構築する構想の実現に向けた検討の結果について発表する。当初想定していた開発を当該環境で実施することは困難であることが分かったが、一方でそれによりまさしく本提案の構想が次世代のスパコン環境において実現されると有益であると考えられることが分かった。


16:50 ~ 17:00

休憩

H24年度後期 若手利用者支援 新規採択者発表

17:00 ~ 17:20 超並列環境向け固有値計算プログラムの性能予測モデルの開発
深谷 猛(神戸大学大学院 システム情報学研究科)

概要:

 密行列の固有値計算は、量子化学計算、統計計算など、様々な科学技術計算の分野で必要とされる重要な行列計算の一つである。これら固有値ライブラリ開発の過程で作成したプログラムの性能を評価しボトルネックの部分を改善するチューニングを行うことになるのだが、テスト機会は限定される。そこで性能予測モデルの構築手法を確立することは重要な課題である。我々が開発中の固有値計算プログラムを題材として、性能予測モデルの構築手法の開発を行う。


17:25 ~ 17:45 HPC向け高水準プログラミング言語X10の評価
佐藤 芳樹(東京大学大学院 情報理工学系研究科)

概要:

 本課題では、HPC向けの新しい並列分散プログラミング言語X10の動作をOakleaf-FX上で確認し、実用に足る並列分散機能が有効か、パフォーマンスはスケールするかなどを明らかにする。まずX10のC++版とJava版について、Oakleaf-FXへの導入可能性を調査するとともに技術課題を明らかにする。次に、技術課題をクリアするための方策を検討し実行する。


17:50 ~ 18:10 大規模連立一次方程式における精度保証付き数値計算の実装と評価
森倉 悠介(早稲田大学大学院 情報理工学系研究科)

概要:

 本研究は、連立一次方程式の精度保証付き数値計算を並列化して性能評価を行い、大規模計算環境における高信頼ソフトウェアの基盤づくりを目標とする。連立一次方程式の精度保証付き数値計算は真の解の存在を示し、真の解と近似解との定量的な誤差の限界を数学的厳密に把握する。

閉会

18:10 ~ 18:20 おわりに

中島 研吾(東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門長・教授)


19:00 ~ 懇親会

お魚倶楽部 はま(東京大学大気海洋研究所 1F)

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懇親会参加票
( 2012年10月8日 (月) までに katagiri@cc.u-tokyo.ac.jp へお送りください )


E-サイエンス若手・女性研究者シンポジウム2012
2012年10月17日(水)の懇親会に参加します


会費:4,000円


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ご所属:
備 考:領収書が必要な方はここにご記載ください。(宛名:       )
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ポスター発表者(ポスター掲示のみ)

1. 大気物質輸送モデルによる東アジア地域大気汚染のマルチスケールシミュレーション
山地 一代(独立行政法人海洋研究開発機構)

概要:

 大気汚染物質の分布は、都市域だけでなく、大陸規模から半球規模での輸送・生成・消滅が大いに寄与している。本課題では、大気汚染物質の挙動を把握するための有用なツールである、Community Multi-scale Air Quality Model(CMAQ)を用いて、東アジア地域大気汚染のマルチスケールシミュレーションを実施した。空間分解度、10、20、40、80 km、冬期と夏期の一ヶ月程度のシミュレーションを行なった結果、空間解像度を上げることで、NO2 カラム濃度の増加と対流圏O3濃度の減少が確認できた。


2. 高解像度化学輸送モデルを用いた春季東アジアにおける越境大気汚染の定量化
池田 恒平(独立行政法人海洋研究開発機構)

概要:

 領域化学輸送モデルを用いて、九州西部に位置する福江島の微小粒子状物質 (PM2.5) 濃度に対する日本国内及び東アジア域からの越境輸送の寄与を定量的に求めた。モデルは PM2.5 濃度の季節変化や高濃度イベントをおおよそ再現していた。夏季を除き日本国内からの影響は小さく、中国中部からの寄与が卓越していた。また、春季を対象に水平解像度を細かくした実験を行い、モデル分解能が越境輸送量の推定に及ぼす影響を調べた。 


3. 気象数値シミュレーションモデルにおける grid refinement 手法の開発2
伊賀 晋一(独立行政法人理化学研究所 計算科学研究機構)

概要:

 地球規模の大気大循環を考える上で、熱帯域の積雲対流の果たす役割は大きく、そこの解像度を上げることでより効率的な大気大循環シミュレーションが可能となることが期待される。そこで、全地球で一様な解像度の格子および熱帯域の解像度を高くした格子の2通りの格子を用いて、全地球大気シミュレーションを行った。また本課題では、より安定で効率的な計算が可能になるよう、格子作成方法の改良も行った。