東京大学情報基盤センター スーパーコンピューティング部門

2021年度若手・女性利用採択課題

このたびは、お申し込みをいただきどうもありがとうございました。以下の基準による厳正な審査のうえ、課題採択をさせていただきました(順不同)。

  • スーパーコンピューターを利用することで学術的にインパクトがある成果を創出できると期待される点
  • 大規模計算、テーマの重要性

2021年度(前期)

課題名 シミュレーションを活用した原子力発電所のリスク評価
氏名(所属) 久保 光太郎(東京大学 工学系研究科)
利用システム Oakbridge-CX
東京電力福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所では、安全性向上をさせるために、確率論的リスク評価を用いて有効な事故対策の検討がなされている。しかしながら、本手法の課題の一つとして、時間依存性を有する機器やシステムの信頼性モデルを取り扱うことが困難である点があげられる。我々の研究グループでは、確率モデルと複数のシミュレーションを組み合わせることにより、上記課題を解決する手法を提案しているが、計算負荷が膨大となるため詳細な評価は行えていなかった。本課題では、スーパーコンピュータを活用して、火災や溢水といった外部ハザードのシミュレーションとシビアアクシデントシミュレーションを組み合わせることにより、大規模かつ詳細なリスク評価を行う。

課題名 Numerical simulation of solutal Marangoni convection in a shallow rectangular cavity
氏名(所属) ZHANG JIANGAO(大阪大学 基礎工学研究科)
利用システム Reedbush-H
The Marangoni flow has been widely concerned for its rich dynamical features and its wide existence in nature and industrial processes, such as oceanography, droplet, thin-film coatings, and crystal growth. To the best of our knowledge, most studies only considered the situation of pure thermal Marangoni effect, and the solutal Marangoni case, which also occurs in some processes, hasnot been considered. Therefore,in this work, solutal Marangoni flow with LSA method would be investigated.

課題名 分子動力学計算で明らかにする金属結合タンパク質のダイナミクス
氏名(所属) 森田 陸離(筑波大学 計算科学研究センター)
利用システム Reedbush-H
微量金属は生体内に豊富に存在しており、タンパク質に配位結合することで活性を調節する。この時、タンパク質が金属を掴む過程においては、タンパク質の大きな構造変化が生じる。また、安定構造では複数のアミノ酸側鎖が金属を掴んでいるが、実際には一部のアミノ酸のみが配位した中間状態が多数存在する。これらの状態変化のダイナミクスは実験的手法による観察が困難であった。本課題では分子動力学シミュレーション(MD)を用いて金属結合タンパク質の状態変化を仔細に解析することを目的とする。これにより実験で得られた数値との比較検証が可能になる。また、それぞれの金属結合タンパク質には正しく機能する上で好ましい金属イオンが存在している。しかし、さまざまなシグナル伝達のメッセンジャーとして用いられる金属とタンパク質の間の特異性はどのようにして生じたのかは明らかになっていない。本課題では金属パラメータの変化によって金属特異性の分子機構を明らかにすることを目的とする。タンパク質について金属特異性を明らかにすることで、有毒金属の毒性評価や有毒金属を吸着する生体材料の設計に必要な情報を提供することが期待される。

課題名 PaCS-MDと異常検知を援用したタンパク質構造遷移経路の探索
氏名(所属) 原田 隆平(筑波大学計算科学研究センター)
利用システム Reedbush-H
本研究では、タンパク質の構造遷移探索法であるカスケード選択型分子動力学計算 (PaCSMD)と機械学習の1つである異常検知を援用することで、生体機能に重要なタンパク質の長時間ダイナミクス (レアイベント)を効率的に抽出する「異常検知型PaCS-MD (ad-PaCS-MD)」を開発する。具体的には、「構造変化のし易さ」と「構造の異常さ」を異常検知により対応付け、異常度が高い構造を特定し、PaCS-MDの初期構造に採用する。 PaCS-MDの各サイクルにおいて「異常度が高い構造 = 遷移確率が高い構造」から短時間MDを繰り返すことで構造遷移を誘起し、構造変化 (遷移経路)を自動的に予測するad-PaCS-MDを開発する。更に, ad-PaCSMDを複合体の解離プロセス抽出に適用した応用研究も実施する。

課題名 分子動力学計算で解明する維持メチル化酵素DNMT1 の活性化メカニズム
氏名(所属) 保田 拓範(筑波大学 理工情報生命学術院)
利用システム Reedbush-H
細胞は原則として同じ塩基配列を有するにも関わらず、異なる性質を持つ。この理由は、細胞ごと にDNA修飾が異なるためである。例えば、DNA のメチル化は遺伝子の発現を制御するため、メチル 化のパターンが異なれば発現する遺伝子は異なる。つまり、メチル化パターンは細胞固有の性質を 決定する要因の一つである。一方で、DNAは半保存的に複製されるため、ヘミメチル化DNAを2本 鎖ともメチル化する必要がある。この過程を維持メチル化と呼び、メチル化パターンを娘細胞に引 き継ぐ役割を担う。DNMT1(維持メチル化酵素1)は、維持メチル化の中心として働く酵素である。DNMT1の活性はDNA複製時にのみ要求されるため、高度に制御される必要がある。具体的には、 DNA複製時以外はDNMT1のDNA結合部位が露出しておらず活性がない。近年、ユビキチン化された ヒストンがDNMT1を活性化することが明らかになった。しかし、ユビキチンとヒストンの複合体がDNMT1の構造変化を誘起する活性化メカニズムは不明であった。本研究は、分子動力学シミュレ ーションを用いてDNMT1の活性化におけるビキチンとヒストンの機能解明を目的とした。

課題名 降着円盤乱流におけるAlfven的揺動と圧縮的揺動の配分
氏名(所属) 川面 洋平(東北大学 学際科学フロンティア研究所)
利用システム Oakforest-PACS
Event Horizon Telescope(EHT)は、人類史上初となるブラックホール周辺からの放射分布の画像を公開したが、観測結果を解釈するためには,粒子輸送や粒子加熱など、降着円盤で起こる様々な物理 現象の鍵となるプラズマ乱流をより深く理解する必要がある。しかし数値計算コストの制限から、これまで降着円盤における乱流の微小スケールの特性は十分に理解されていなかった。そこで本研究では、乱流計算に特化した超高並列性能を持つシミュレーションコードを用いて、降着円盤乱流の詳細な性質を調べ、EHTの観測結果を解釈するために必要な情報を明らかにする。具体的には申請者らが開発した超高並列性能を持つ電磁流体力学(MHD)コードを用いて、圧縮的(縦波的)揺動とAlfven的(横波的)揺動の比を求める。この値を申請者らのこれまでの研究と組み合わせることで、これまでにない精度で降着円盤の放射分布を予測することが可能となる。

課題名 異なるガラス系における降伏臨界性・限界安定性の普遍性について
氏名(所属) 大山 倫弘(東京大学 総合文化研究科)
利用システム Reedbush-HWisteria-O ,Wisteria-A
液体を急冷するとランダムな構造のまま固化しガラス状態となることがある。ガラス転移と呼ばれるこの現象は物性物理における最難問の一つと言われており、長年にわたり多くの研究の対象とされてきた。しかし、これまで多くの知見が蓄積されてはいるもののいまだ完全な理解からは程遠い。そんななか近年、ガラスの普遍的かつ本質的性質の候補として,無限小の擾乱に対して塑性変形 を示しうるという性質、限界安定性が注目を集めいている。申請者は最近、せん断外場により誘起される降伏臨界性に注目することで限界安定性を定量評価することが可能になることを見出した。特に臨界指数の比較を行えば異なる系の間の普遍性についての検討が可能になる。本研究ではこの降伏臨界性を足がかりに異なるガラス系が持つ限界安定性が普遍性を示すかどうかを分子動力学法により調べる。特に臨界指数の正確な測定には大規模系も含む複数のシステムサイズで準静的外場に対する応答を高精度で測定する必要があるため、GPUによる大規模並列計算を実行する。

課題名 ディンプルの敷設および脈動冷却流によるガスタービン翼後縁部カットバック面上フィルム冷却の 高性能化
氏名(所属) 徳武 太郎(東京農工大学 工学府科)
利用システム Oakforest-PACS
航空用・産業用ガスタービンの熱効率向上のためには、より少量の空気量でタービン翼等の構造部 材を所定温度まで冷却することが重要である。ガスタービン翼後縁部は形状が薄いうえに、翼表裏 面からの入熱が存在するため、冷却が最も困難な部位の一つである。本課題では翼後縁部のカット バック面フィルム冷却技術(冷却空気をカットバック面上に吹き出し、熱遮蔽と対流冷却を同時に 行う手法)を対象に、冷却効率の高性能化を目的とする。先行研究では伝熱実験と可視化試験によ り、カットバック面上にディンプル(凹み形状)を敷設することでカットバック面上の対流熱伝達 性能を上昇させ、高性能な冷却が行えることが示されている。また、冷却空気に適切な周波数、振幅をもつ脈動を付与することでフィルム冷却効率が向上することが示されている。本課題では、(1) 複数のカットバック面形状(平滑及びディンプル面)がフィルム冷却場に与える影響、および(2)脈動付与がフィルム冷却場に与える影響について大規模非定常数値解析を実施し、それぞれがフィルム冷却における対流熱伝達と熱遮蔽性能に与える影響を調査する。

課題名 物理法則に基づいた深層学習による多孔質弾性変形の解析
氏名(所属) 張 毅(地球環境産業技術研究機構)
利用システム Reedbush-HWisteria-O ,Wisteria-A
The coupled PDEs in hydro-mechanical problems are usually difficult to solve by numerical modeling methods and have a high computational cost. The cost could further affect the efficiency of inverse modeling when using measurement data to estimate hydraulic and mechanical parameters. We aim to solve such hydro-mechanical problems using the physics-informed neural networks method to alleviate this cost. We will evaluate the accuracy of results obtained by deep learning and numerical modeling.

課題名 キャリアドープされたKitaev模型候補物質の繰り込み群による研究
氏名(所属) 福井 毅勇(東京大学 理学系研究科)
利用システム Oakforest-PACSOakbridge-CX
本研究は、Kitaev模型候補物質へのキャリアドープの効果を汎関数繰り込み群により明らかにするものである。汎関数繰り込み群により、ドープ量やHeisenberg項や非対角相互作用の効果をパラメータとして振りながら、基底状態相図を計算する。自己エネルギーのフイードバックにより、フラストレーションの効果を適切に取り入れる点が独創的な点である。

2021年度(インターン)

課題名 階層型直交格子と再帰的なフィッティングによる回転翼の非定常空力予測
氏名(所属) 菅谷 圭祐(東京大学 工学系研究科)
利用システム Oakbridge-CX
近年、環境負荷を低減することが可能な電動・ハイブリッド航空機が注目されている。また都市部での新しい乗り物として、垂直離着陸な小型の航空機が注目されている。これらの革新的な航空機の空力設計では、数値流体力学(CFD)を用い、機体周りの複雑な流れを予測することが重要である。しかし、航空機や回転翼は形状が複雑であり、CFDを用いた流れの予測に必要な計算格子を生成することが解析のボトルネックになる。そこで、複雑な形状に対し自動で格子を生成可能な直交格子法が注目されている。本研究の目的は、回転翼の非定常乱流解析に向けた、自動格子生成が可能な新しい手法を開発することである。計算には、三次元複雑形状周りに自動で物体適合格子を生成可能で、支配方程式である保存則が厳密に満足される。直交格子法のひとつであるRecursiveFitting 法を用いる。また物体の回転を再現するため、移動格子法を組み合わせる。加えて、壁面近傍の乱流境界層を精度良く予測するため、壁関数を組み合わせて解析を行う。

2021年度(後期)

課題名 Feedforward型のNeuralNetworkを用いた多体電子系波動関数の基底状態の解法
氏名(所属) 乾 幸地(東京大学 工学系研究科)
利用システム Reedbush-H,Reedbush-LWisteria-A
近年、深層学習に代表されるニューラルネットを用いて量子多体系の波動関数を近似良く求めようという研究が盛んに行われている。フェルミオン系におけるこれまでの研究の多くは、反交換関係を表現するために行列式やパフィアンなどによる一体の波動関数と、相互作用効果を記述するニューラルネットを組み合わせて用いている。これまでの研究では、一体の波動関数部分に対する研究はそこまで盛んに行われてこなかった。そこで我々は畳み込み型ニューラルネットと行列式を組み合わせることで、精度を向上させることを目的に、系統的な計算を実行する。

課題名 ダイマー粒子を用いたガラスのJohari-Goldstein beta緩和の理解
氏名(所属) 白石 薫平(東京大学 総合文化研究科 )
利用システム Oakbridge-CX
液体を急冷すると、融点で結晶化を避けて過冷却液体状態になる。この状態では、僅かな温度低下によって系の緩和時間が急激に増大し、仕舞には実験の時間スケールを越え、分子の構造が乱雑なまま凍結したガラスが生じる。この過冷却液体が示す遅い動力学は、統計力学の通常の理解が適用できない現象である。様々な過程から成る緩和動力学を理解することは、ガラス転移の理解に直結する重要な問題である。本研究では、Johari-Goldstein(JG)beta緩和過程に着目する。これは、他の主要過程であるalpha緩和よりも短時間に現れる過程であり、分子性ガラスの実験で普遍的に観測されているが、数値的な研究は限定的である。それは、多くのシミュレーションが依拠してきた等方的な球によるモデルガラス系には、JGbeta緩和過程が出現しないからである。この研究では、近年JG beta緩和を示すことが報告されたダイマー粒子系の分子動力学シミュレーションを行う。そして、レプリカ交換法やisoconfigurationalアンサンブルといった計算物理学の手法を駆使し、JGbeta緩和の微視的な運動と発生メカニズムに迫る。

課題名 グラフ構造を入力として応力分布を出力とするGANベースの有限要素法のSurrogateモデルの研究
氏名(所属) 中井 優(東京大学 工学部システム創成学科)
利用システム Wisteria-A
有限要素法の深層学習によるSurrogateモデルとして、メッシュを入力データとして、メッシュの各ノードにおける応力分布を出力とするような、GANをベースとした、有限要素法による応力分布の生成過程をニューラルネットワークによってモデル化した生成モデルを提案する。提案手法は、深層学習の持つモデルの表現力と計算量のトレードオフの選択の自由度が大きいという特徴を利用して、有限要素法による解析よりも高速な応力分布の推論が可能にする。さらに、グラフのような大きさ(ノード数)の変化する入力に適用することが困難であるという問題に対して、GNNと呼ばれるネットワーク構造を採用してグラフ構造の扱いを可能にすることで、また入出力のパターンを学習する識別モデルではなくデータの生成過程そのものを学習する生成モデルを利用することで、従来の識別モデルを利用した深層学習によるSurrogateモデルを上回る性能を持ち、それらのモデルでは達成できなかった応力分布そのものの生成を可能にするような、新たなSurrogateモデルを構築する。

課題名 公共データを活用した転写因子結合ダイナミクスの解析
氏名(所属) 植野 和子(国立国際医療研究センター ゲノム医科学プロジェクト)
利用システム Oakbridge-CX
本研究課題では申請者らが過去の研究で発見した、RNAポリメラーゼIIと共役してゲノムDNA上を「動く」転写因子と同じ性質を持つ分子が他にどれくらい存在するのかを明らかにするため、公共データベースに登録された大量の次世代シークエンス解析データを用いて、各々の転写因子の結合動態を網羅的に解析する。具体的には、米国のポストゲノム解析プロジェクトであるENCODE(ENCyclopedia Of DNA Elements) において収集されたマウスおよびヒトの転写因子のChIP-seqデータを収集し、遺伝子配列上における分布を解析することで、その挙動を明らかにしていく。またその際に、同サンプルから得られた遺伝子発現データを併用して解析することで、転写制御機能と分子運動を関連づけた解析を行う。以上の解析から、遺伝子配列上を動く新規の転写因子を同定すると共に、転写因子の構造と分子運動、機能を関連づける普遍性のある法則を見出すための基盤的データを創出する。

課題名 波形インバージョンによる地球マントル最下部の地震波速度構造推定
氏名(所属) 大鶴 啓介(東京大学 理学系研究科)
利用システム Oakforest-PACS
地球マントルの最下部数百kmの領域は、固体岩石で構成されるマントルと高温の液体鉄合金である外核が接する核-マントル境界(CMB)の直上に位置し、熱及び化学組成の不均質を生み出す主要な領域であると考えられる。これまでに行われた地震波による構造推定からは、アフリカ下と太平洋下の2箇所に巨大な低速度異常域(LLSVP)が存在することが知られている。しかし、これが複数の熱的な上昇流の束なのか、化学組成の異なる物質の塊なのかわかっておらず、その判別にはより高い解像度の構造推定が必要である。詳細な構造推定を行う際に必要となる正確な理論波形についても、短周期までの計算には多くの計算資源が必要となる。そこで本課題では、地震波形に含まれる情報を余すことなく活用することでより詳細な構造推定を可能にする波形インバージョン手法と、スペクトル要素法により理論波形を計算するSPECFEM3D_GLOBEというソフトを使用して、LLSVP内部の詳細な地震波速度構造を推定することを目指す。

課題名 地震波形インバージョンによるマントル最下部のS・P波速度構造同時推定
̶地球深部の熱・化学進化の理解に向けて̶
氏名(所属) 佐藤 嶺(東京大学 理学系研究科)
利用システム Oakforest-PACS
地球の核-マントル境界(CMB)は、固体岩石のマントルと液体鉄合金の外核が接する地球内部の最も主要な熱・化学組成境界であるため、CMB直上数100km(D″領域)は地球の熱・化学進化の理解に重要な領域である。D″領域では地温勾配とマントル組成のソリダスが近いために部分溶融に伴う化学分化を起こすマグマが定常的に発生する可能性が高く、また典型的な沈み込み領域下においては海洋プレートの沈み込みに伴う化学組成不均質が形成されると考えられている。従って観測情報から化学組成異常のサイズと度合いを制約することが重要である。しかし、地震波速度不均質を温度・化学組成効果に定量的に分離するにはS・P波速度構造を同程度の解像度で同時に推定する必要があったが、データセットの質や種類が異なる等課題があった。また正確な理論地震波形の計算も必要であるが、短周期までの計算は計算資源の問題から困難であった。本申請研究では地震波形に含まれる情報を余すことなく活用できる波形インバージョン手法と、スペクトル要素法による理論地震波形計算ソフトウェアSPECFEM3D_GLOBEを用いてD″領域のS・P波速度構造を同時推定する。

課題名 分子動力学計算を用いたDNA分解酵素の失活メカニズムの解明
氏名(所属) 大滝 大樹(長崎大学 生命医科学域(医学系))
利用システム Oakbridge-CX
酵素は生物が生きていく上で必要な消化・分解・吸収・代謝などのあらゆる過程に関係する。酵素における変異の多くは酵素作用を失活させることが分かっているが,その分子的なメカニズムについては不明な点が多い。本研究では,免疫系疾患に関係するDNA分解酵素に着目し,分子動力学シミュレーションにより多くの変異型を調べる。相互作用などの解析から,「変異の影響がどのような経路をたどり,最終的にどこに影響を及ぼすか」を分子論的に明らかにすることを目的とする。

課題名 ディープラーニングによる高精度マルウェア分析
氏名(所属) 三橋 力麻(東京大学 情報理工学系研究科)
利用システム Wisteria-A
サイバーセキュリティの現場では、セキュリティアナリストとマルウェアの戦いが続いている。マルウェアの構造や動作は従来よりも複雑さを増しているため、セキュリティアナリストは、新しいマルウェアを入手すると、その一つ一つを丁寧に解析せざるを得ない状況にあり、その作業負担は膨大になっている。その一方で、マルウェアの攻撃はますます高度になっており、日々発見される新しい脆弱性や、検知動作の検知を回避する仕組みを取り込みながら、次々に新しいマルウェアが量産されている。ただし、マルウェアは一度開発されると、検知を回避するためプログラムの構造の一部を変更した「亜種」が数多く生産される特徴がある。そこで、未知のデータセットの中から、マルウェア亜種を自動的に既知の仲間に分類できれば、セキュリティアナリストによるマルウェア解析の負担を大きく減らすことができる。本課題では、ディープラーニングを活用した高精度なマルウェア分析を実現し、セキュリティアナリストによるマルウェア解析作業の補助や新たなマルウェア亜種の速やかな検出などマルウェアによる被害を早期に防止するためのシステムを実現する。