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若手・女性利用採択課題

平成28年度 スーパーコンピューター若手・女性利用者推薦採択課題

 このたびは、お申し込みをいただきどうもありがとうございました。以下の基準による厳正な審査のうえ、課題採択をさせていただきました(順不同)。

  • スーパーコンピューターを利用することで学術的にインパクトがある成果を創出できると期待される点
  • 大規模計算、テーマの重要性
  • 既発表文献

平成28年度(前期)

課題名 カノニカル法に基づいたQCD計算による、有限温度、有限密度でのQCD相構造の解析
代表者名(所属) 福田 龍太郎(東京大学 理学系研究科)
 量子色力学(QCD)によって記述される有限密度クォーク多体系の相構造を、QCDの第一原理計算である格子QCD計算を用いて解明する。より現実に近い軽いクォークの伝搬を厳密に評価できる新たな冪展開法を利用する。そのため、ランク1万程度の行列に対するCG法を実装し、効率の良いアルゴリズムと実装法の開発を目指す。
 格子QCDによるシミュレーション結果の学術的な貢献に加え、多くの科学技術計算で利用できるCG法の前処理や高性能実装技法は重要であり、若手研究者の課題として採択に値する。

課題名 粒子法を用いた複雑な表面を持つ流体の大規模並列計算
代表者名(所属) 桶作 愛嬉(東京大学 理学部)
 理学部物理学科の学部学生の有志により、5月祭の展示を目的に、物理学に関する計算機シミュレーションやデモンストレーションの作成を行っている。本提案は粒子法を対象とし、大規模計算をするための、スーパーコンピュータ利用法と並列化方式の習得を狙うものである。最終的に5月祭での展示と発表をすることで、一般の方にも並列化の重要性を伝えることを目指す。
 スパコン活用、人材育成、およびアウトリーチに資する目的で本制度の目的に適合すると判断する。参加する学部学生のスパコン利用、並列計算の理解と技術習得に資すると判断されるため、採択に値する。

平成28年度(インターン)

課題名 大規模並列環境におけるグラフ最良優先探索の効率的な仕事分配手法
代表者名(所属) 陣内 佑(東京大学 総合文化研究科)
 グラフ上の最短経路を求めるアルゴリズムであるA*探索の並列化手法は数多く提案されており、先行研究では2400コアで実験が行われているが、ロードバランスのみを考慮し通信オーバーヘッドを全く考慮しない手法であった。現在までに、ロードバランスと通信オーバーヘッドの両方を考慮した仕事分配手法、Abstract Zobrist hashingを提案し、小規模クラスタにおいて評価を行っているため、本課題では提案手法の大規模クラスタ上での評価、スーパーコンピュータの環境により適したアルゴリズムの開発を目指す。
 グラフ探索は広い分野で応用されており、その大規模環境での効率化は非常に重要な課題の一つである。計算機科学の観点から価値があると判断するため、採択に値する。

課題名 複数の収束しにくい成分を指定するSA-AMG法の研究と改良
代表者名(所属) 野村 直也(工学院大学 工学研究科)
 大規模連立一次方程式を高速に解く手法であるSA-AMG法は、問題行列から階層的に粗い問題を生成し、それを利用することで解く手法であるが、粗い問題を生成する際に、収束しにくい成分を指定でき、この成分を用いることにより解の収束性が良くなるため、我々は収束しにくい成分を任意の個数指定できるライブラリを研究開発している。現在までの研究により、問題行列から予想される収束しにくい成分を指定することにより、収束性が改善することがわかっており、またV-cycleを用いてニアカーネルベクトルを抽出し、それを適切な本数指定することにより、高並列環境下でも、さらに収束性が高まることがわかっているが、抽出したニアカーネルベクトルを多く指定すればよいわけではないこともわかっている。そこで本課題では、より良いニアカーネルベクトルを抽出する手法を検討し、また多くの問題に対して適用することでその有効性を示すことを目的としている。
 大規模連立一次方程式は様々な数値解析問題に現れる重要な問題であり、その高速化は非常に重要な課題の一つである。計算機科学の観点から価値があると判断するため、採択に値する。

平成28年度(後期)

課題名 brucite の(001)面における摩擦特性の決定
代表者名(所属) 奥田 花也(東京大学 理学部)
 層状鉱物 brucite (Mg(OH)2)の(001)面における摩擦特性に対してすべり面以外の層の存在が与える影響を第一原理電子状態計算手法を用いて見積もることを目的とする。
 これまでは層の上下に十分な空間 を取ることで、すべり面以外の層の存在が無視できると仮定して、 第一原理電子状態計算に基づいて見積もられてきたが、本申請では brucite の複数層で計算を行い<100>方向の摩擦力を求め、すべり面以外の層の存在の効果を調べる。
 層状鉱物の(001)面における摩擦特性の理解は海溝型巨大地震断層のすべり特性の理解に貢献することが期待できると考えられ、計算科学の観点から価値があると判断するため、採択に値する。

課題名 竜巻を伴う回転積乱雲(スーパーセル)のエントレインメントを調べる理想化数値実験
代表者名(所属) 末木 健太(東京大学 理学系研究科)
 積乱雲側面で生ずる乱流混合を陽に表現するスーパーセル(竜巻を生ずる特殊な回転積乱雲)の理想化数値実験を行い、スーパーセルのエントレインメント率を定量化し、環境場がスーパーセルの生成・維持過程に与える影響を明らかにすることで、スーパーセルの起こりやすさを精度良く見積もる手法の確立を目指す。
 スーパーセルの理解は竜巻の予報精度の向上などにつながり、計算科学の観点から価値があると判断するため、採択に値する。

課題名 直接数値計算による Langmuir 乱流の研究
代表者名(所属) 藤原 泰(京都大学 理学研究科)
 Langmuir 乱流の数値モデルとして最近開発された非静力学自由表面モデルを用いて水面波と流れの両者を直接計算する理想化数値実験を行うことで、1波平均系の妥当性を直接検証し、2波平均系で表現されない現象の影響の評価を行うことを目的とする。
 本研究は深水波と流れの相互作用を現実的な Langmuir 乱流のスケールで直接計算する初めての例であり、計算科学の観点から価値があると判断するため、採択に値する。