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若手利用採択課題

平成24年度 スーパーコンピューター若手利用者推薦採択課題

 このたびは、お申し込みをいただきどうもありがとうございました。以下の基準による厳正な審査のうえ、課題採択をさせていただきました(順不同)。

  • スーパーコンピューターを利用することで学術的にインパクトがある成果を創出できると期待される点
  • 大規模計算、テーマの重要性
  • 既発表文献

平成24年度(前期)

平成24年度(前期)については、平成23年度(後期)からの継続課題(HA8000クラスタシステム利用)に限り募集いたしました。

課題名 課題責任者名
課題責任者所属
概要
ブロックヤコビ法による超並列固有値計算プログラムの開発

高橋 佑輔


神戸大学大学院
システム情報学研究科

 対称密行列の固有値計算において、小規模な問題を多数のコアを使って超高速に解きたいという需要がある。ブロックヤコビ法は、従来手法より計算量は数倍多いものの、プロセッサ間の通信回数が少なく、かつ、メッシュ型の通信ネットワークに適した通信パターンを持っている。前年度採択で、超並列実行を通じ、演算面、通信面の性能ボトルネックを明らかにした。今年度は、その解決手法を実装し評価することで、1万~2万元の行列の固有値問題を数千コアを使って超高速に解けるライブラリの開発を目指す。対称密行列の小規模問題を超並列実行する需要は確かにあり、超並列実行時の問題となっている。この問題について解決を試みる数少ない国内研究であり、採択に値する。
広域 ‐ 高精細数値モデルを用いた冬季モンスーン擾乱のマルチスケール解析

前島 康光


名古屋大学
地球水循環研究センター

 「広域のシミュレーション」と「高精細シミュレーション」の両方を、モデル間で双方向にデータのやりとりを行いながら同時実行する ”CReSS ver.3.0”(Cloud Resolving Storm Simulator)に必要な改良を施した。前回採択時に開発した数値モデルを用いて、2010年2月1日、2011年1月15日に発生した事例を対象にした解析を行う。特に小低気圧の発生をもたらし得る環境場の状態の解明を行う。前年度採択後からも継続的に論文出版がなされており、今後も学術的な進展が期待できる。学術的観点から、採択に値する。

平成24年度(後期)

課題名 課題責任者名
課題責任者所属
概要
超並列環境向け固有値計算プログラムの性能予測モデルの開発

深谷 猛


神戸大学大学院
システム情報学研究科

密行列の固有値計算は、量子化学計算、統計計算など、様々な科学技術計算の分野で必要とされる重要な行列計算の一つである。これら固有値ライブラリ開発の過程で作成したプログラムの性能を評価しボトルネックの部分を改善するチューニングを行うことになるのだが、テスト機会は限定される。そこで性能予測モデルの構築手法を確立することは重要な課題である。我々が開発中の固有値計算プログラムを題材として、性能予測モデルの構築手法の開発を行う。並列固有値ソルバーEigen-Kを基にした性能予測モデルの開発である。超並列向きの固有値ソルバーの性能予測は重要な課題であり、エクサに向けた研究開発として採択に値する。
新しいクリロフ部分空間理論を中核とした超大規模超並列電子状態計算

星 健夫


鳥取大学大学院
工学研究科

独自開発の超大規模超並列電子状態計算コード(ELSES)を当座の対象として、新しいクリロフ部分空間理論の最適利用技術開発に取り組む。個々の計算での最適性を実現するためには利用技術が必要であり、本課題で取り組む。特に物質科学は無数のテーマをもち、多様なサイズの問題(10原子系から1000万原子系まで)が多様な計算機(10コア程度から「京」クラスまで)で用いられることを想定する。利用性の観点から研究することはエクサに向けた並列環境でも重要な課題であり、採択に値する。
HPC向け高水準プログラミング言語X10の評価

佐藤 芳樹


東京大学大学院
情報理工学系研究科

本課題では、HPC向けの新しい並列分散プログラミング言語X10の動作をOakleaf-FX上で確認し、実用に足る並列分散機能が有効か、パフォーマンスはスケールするかなどを明らかにする。まずX10のC++版とJava版について、Oakleaf-FXへの導入可能性を調査するとともに技術課題を明らかにする。次に、技術課題をクリアするための方策を検討し実行する。スパコンにおける並列言語は生産性の観点からエクサに向けた重要な課題である。本センターにおけるコンピュータサイエンス系の研究を推奨する目的からも、採択に値する。
大規模連立一次方程式における精度保証付き数値計算の実装と評価

森倉 悠介


早稲田大学大学院
基幹理工学研究科

本研究は、連立一次方程式の精度保証付き数値計算を並列化して性能評価を行い、大規模計算環境における高信頼ソフトウェアの基盤づくりを目標とする。連立一次方程式の精度保証付き数値計算は真の解の存在を示し、真の解と近似解との定量的な誤差の限界を数学的厳密に把握する。スパコンにおける精度保証の実装は、エクサに向けて重要な課題となると予想される。課題の重要性から、採択に値する。