東京大学情報基盤センター スーパーコンピューティング部門

2021年度萌芽共同研究公募課題
「AI for HPC:Society 5.0実現へ向けた人工知能・データ科学による計算科学の高度化(試行)」採択課題

厳正な審査のうえ、下記課題採択をさせていただきました(順不同)。

2021年度

課題名 超巨大アンサンブル計算と機械学習の協調による地球科学シミュレーションの不確実性定量化
氏名(所属) 澤田 洋平(東京大学 工学系研究科附属総合研究機構)
利用システム Wisteria/BDEC-01 (Odyssey, Aquarius)
地球科学におけるシミュレーションには様々な不確実性が存在し、その定量化と最小化が重要である。 モデル選択、モデルパラメータ選択、初期条件の誤差、境界条件の誤差といった不確実性をもたらす要因のうち、どの要因が結果を大きく左右するのかを明らかにした上で、地球観測を用いて不確実性を効率よく 最小化する”不確実性定量化(Uncertainty Quantification)”手法の確立が求められている。 本研究では、Wisteria/BDEC-01 の CPU ノードと GPU ノード双方の性能を最大限に引き出して水文気象学における最大計算規模のシミュレーションに対する不確実性定量化問題に挑戦する。 大量のパラメータ等の設定の組み合わせによる超巨大アンサンブルシミュレーションと、その結果を模擬する機械学習の協調により、効率よく大規模な不確実性定量化問題を解く。 これにより単一のモデルを用いた決定論的な予測か ら、データに基づいた多様なモデル群による確率的な現象予測へと、地球科学におけるモデリングの新しいパラダイムの創出を目指す。

課題名 数値シミュレーションと機械学習との融合による東京湾の赤潮予測
氏名(所属) 菊地 淳(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
利用システム Wisteria/BDEC-01 (Aquarius), Oakbridge-CX
赤潮は、海中のプランクトンの異常発生により引き起こされ、水産業への被害をもたらす。被害を未然に防止するために、その発生時期・規模を予測することが重要な課題となっている。 機械学習を用いた赤潮発生予測の手法が近年活発に研究されており、伝統的な統計学に基づく手法より精度の良い予測が可能になっているが、未だ十分とはいえない。 本研究では、東京湾を対象として、領域海洋モデルによる数値シミュレーションと現業の気象予報・解析データ、そして現場観測データを機械学習により統合し、高精度な赤潮予測を実現する。 数値シミュレーションにおいて、東京湾内のダイナミクスを解像できる高い空間解像度と黒潮や潮汐による外洋水との混合を十分に表現できるだけの広い計算領域を設定し、長期間の計算を行うために大型計算機を用いる。 また、赤潮のみならず水圏生態系について、将来における空間分布を予測するためのビッグデータを用いた機械学習システムの構築準備を行う。