東京大学情報基盤センター スーパーコンピューティング部門

2023年度若手・女性利用採択課題

このたびは、お申し込みをいただきどうもありがとうございました。以下の基準による厳正な審査のうえ、課題採択をさせていただきました(順不同)。

  • スーパーコンピューターを利用することで学術的にインパクトがある成果を創出できると期待される点
  • 大規模計算、テーマの重要性

2023年度(前期)

課題名 3次元ハイパーハニカム物質の基底状態相図とスピン液体実現可能性
氏名(所属) 福井 毅勇(東京大学 工学系研究科)
利用システム Oakbridge-CXWisteria/BDEC-01 Odyssey
本研究は、3次元のキタエフ量子スピン液体候補物質の物性、とりわけ、量子スピン液体の実現可能性とその性質を汎関数繰り込み群と呼ばれる手法を用いて数値的に解明するものである。対象とする候補物質の模型は、3次元格子を形成している強くフラストレートした量子スピン系である。これまでは、これらの系で精度の高い数値計算は一般に困難であった。この計算を実行するための手法として、汎関数繰り込み群法を用いることが本研究課題の大きな特徴である。汎関数繰り込み群法により、候補物質の有効模型の基底状態相図を広いパラメータ領域について具に明らかにすることで、候補物質におけるキタエフ量子スピン液体実現可能性を解明する。また、有限温度における相関関数や熱力学量の温度依存性を明らかにすることで、候補物質についての実験結果と照らし合わせることで、理論と実験結果の直接的な比較も行う。本研究は、3次元キタエフ量子スピン液体物質設計および候補物質探索の指針を与える。

課題名 RANSとLESを用いたチャネル内乱流熱伝達における脈動条件とディンプル壁面形状の多目的最適化
氏名(所属) 山本 翼(東京農工大学 機械システム工学専攻)
利用システム Oakbridge-CXWisteria/BDEC-01 Odyssey
近年,省エネルギーのために低圧力損失、高熱伝達性能を有する冷却技術が求められている。著者所属研究室の過去の研究では、ティアドロップディンプルをチャネル壁片面に敷設し、冷却流に脈動を付与することにより、熱伝達性能が向上することが確認された。しかし、最適なディンプル壁面形状・配列、脈動条件は未だ明らかではない。本研究では、ディンプル形状・配列、脈動条件の多目的最適化を非定常RANSで行う。ディンプル配列の設計変数は面回転角度、ディンプル配列条件(Staggered, Inline, その中間)とする。ディンプル形状の設計変数は、ディンプル前縁傾斜角度、ディンプル深さとする。目的関数は、ディンプル面平均熱伝達率、圧力損失に加えて、対向平滑面の熱伝達率と壁面せん断応力とする。対向平滑面での値を目的関数に加えることで、ディンプル面が対向平滑面に与える影響が最小となるような最適化が可能となる。最適化後LESによる検証を行い、最適条件に対して位相平均やPOD解析を行うことで流れ場の考察を行う。

課題名 A Python Deep Learning Toolkit for Healthcare Data Analysis
氏名(所属) Li Zihui(Information Technology Center, University of Tokyo)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
AI is already being used in various areas such as diagnosing, clinical decision support, drug discovery, predictive modeling, and patient monitoring. We aim to address the lack of open-source systems that implement deep learning algorithms for healthcare data, especially in languages other than English. We propose the development of a Python toolkit that can process and analyze large amounts of healthcare data in a timely and cost-effective manner using parallel computing.

課題名 形態記述子の導入による細胞プロファイリングの高度化
氏名(所属) 野下 浩司(九州大学 理学研究院 生物科学部門)
利用システム mdx
本利用課題では、細胞プロファイリングにおける特徴量として細胞と細胞小器官の形態記述子を導入すること、距離学習に基づき特徴量空間を推定することにより網羅的1細胞表現型計測の高度化を目指す。 細胞,組織,器官などの「かたち」は機能や疾患に深く結びつく重要な形質である。マルチオミクスデータの活用は今後も進むと予想されるが、フェノーム(表現型の総体)データの蓄積は進んでいない。 本研究により、細胞と細胞小器官スケールでの複雑な「かたち」の定量化ワークフローを構築することで汎用的な「かたち」定量化手法の利用を促進しデータの蓄積を進める。さらに、距離学習による細胞表現型空間の推定により作用機序が未知の化合物や遺伝的なパータベーションに対する概観を得ることを目指す。作用機序が未知の因子に対応した細胞表現型やその一部に共通する特徴を記述する特徴量(記述子)を開発することで、汎用手法ではカバーできない「かたち」のクラス向けのテーラーメイド数理モデル開発を実施することで疾患表現型に関連したあらゆる「かたち」の定量化に取り組み、計測データと表現型値のギャップを埋めることが期待される。

課題名 アンチサイト欠陥を導入したY2Ti2O7/bcc-Feの界面エネルギーの評価
氏名(所属) 大野 直子(横浜国立大学)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
酸化物分散強化(ODS)合金中の照射環境における酸化物粒子安定性を理論的に説明するためのボトルネック解決に向けて、アンチサイト欠陥を導入したY2Ti2O7/bcc-Feの界面エネルギーを評価する。従来の照射下における酸化物粒子の成長/縮小は、オストワルド成長式を基本として、合金母相への過剰空孔導入による拡散係数の変化を中心に論じられてきた。しかし、この手法では同じ温度において成長/縮小という相反する実験結果が得られている理由を説明できない。本研究ではこれまでの申請者の研究に基づき、照射下における酸化物粒子側の変化に着目する。Y2Ti2O7のアモルファス変態温度域(600K~800K)において酸化物にアンチサイト欠陥が導入された場合にbcc Feとの界面エネルギーに生じる変化を、第一原理分子動力学計算によって明らかにする。

課題名 感度解析を用いた台風急速強化のメカニズム解明
氏名(所属) 平野 創一朗(琉球大学)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
猛烈もしくは非常に強い台風のほとんどは、弱い勢力から徐々に発達するのではなく、わずか数日で急発達することで生まれる。このプロセスは急速強化と呼ばれる。しかし、台風の急速強化のメカニズムはいまだはっきりしていない。本課題では、台風の急速強化の要因を明らかにするために感度解析を行う。感度解析により、台風の中心気圧や最大風速といった台風強度の、気象モデル初期値に対する依存性を定量的に見積もることができる。解析対象は、航空による台風直接観測が行われた2022年台風第14号とする。

課題名 The direction of mantle flow beneath Thailand inferred from shear wave splitting measurements
氏名(所属) Autaijaratrasmee Tarudee(The University of Tokyo)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
We infer the anisotropic properties of the mantle beneath Thailand based on shear wave splitting analyses. The magnitude of anisotropy is quantified by the travel time difference (dt) between the fast and slow shear waves. The fast axis orientation of anisotropic minerals is related to the angle (φ) between the P-wave and the fast shear wave. We made the code based on the transverse energy minimization method to infer the dt and φ. To validate the code, we applied it to the data from Incorporate.

課題名 3成分を使用した波形インバージョンによる南大西洋下のマントル最下部領域の地震波速度構造推定
氏名(所属) 大鶴 啓介(東京大学 理学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
地球マントルの最下部数百kmの領域は核-マントル境界(CMB)直上の熱境界層をなしており、外核による加熱を受けて上昇流を発生させることでマントル対流を駆動している。これまでに行われた地震波による構造推定からは、アフリカ下と太平洋下の2箇所に巨大なS波低速度域(LLSVP)が存在することが知られている。しかし、これが複数の熱的な上昇流の束なのか、化学組成の異なる物質の塊なのかわかっておらず、その判別にはより高い解像度の構造推定が必要である。そこで本課題では、地震波形に含まれる情報を余すことなく活用することで詳細な構造推定を可能にする波形インバージョン手法と、スペクトル要素法により理論波形を計算するソフトを使用して、南大西洋下のアフリカLLSVP西側境界域から内部にかけての詳細な地震波速度構造を推定する。そしてその結果から、マントル最下部での物質の流動に関する制約を得ることを目指す。

課題名 星一つ一つを分解した矮小銀河シミュレーション
氏名(所属) 藤井 通子(東京大学 理学系研究科)
利用システム Oakbridge-CX
矮小銀河は天の川銀河よりも三桁程度軽い銀河であり、天の川銀河周りに複数個観測されている。これらの銀河の銀河中心部のダークマターハローの密度分布のべきが平ら(コア)なのか、冪乗(カスプ)なのか、観測とこれまでのシミュレーションにはずれがある。本研究では、新規開発のコードで銀河の星一つ一つまで分解した世界最高分解能のシミュレーションを行い、この問題に答えを出す。

課題名 Microscopic thermal transport properties in protein-based materials
氏名(所属) WANG TINGTING(Graduate School of Science, Nagoya University)
利用システム Wisteria/BDEC-01 OdysseyWisteria/BDEC-01 Aquarius
Thermal transport is among essential biophysical properties of proteins and not fully understood yet. Its relationship with protein structures, dynamics, and functions, will be investigated based on Green-Kubo relation and linear response theory using MD simulations at atomic and residue level to help the design of protein-based materials, specifically, thermal transport within each residue fragment and that through native contacts in proteins, the role of secondary strucure.

課題名 機械学習を利用した高解像度銀河形成シミュレーションの高速化
氏名(所属) 平島 敬也(東京大学 理学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
我々は、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、個々の星まで分解した高解像度銀河形成シミュレーションの達成を目指している。しかし、一部のタイムスケールの短い現象 (超新星爆発など) が、他の全ての粒子の時間積分に必要な演算・通信回数を数百倍に増大させ、現実的な時間内でのシミュレーション実行を不可能にしている。本研究では、ロードバランスを改善することを目的として、銀河内の時間刻みが短くなる領域(超新星爆発など)を孤立系で計算する手法を試みている。そのためには、超新星爆発によるシェルが膨張し時間刻みが短くなる領域の物理量(密度・熱エネルギー・3次元速度) の分布の変化を、実際には計算せずに事前に予測する必要がある。これまでは、将来の映像を予測する深層学習モデル Memory-In-Memory Network (Wang et al.2018) を元に、シェル膨張に伴うガス密度変化を予測する深層学習モデルを開発した。本研究では、さらなる高速化と複数の物理量の予測の実現のために、3D-U-net (Ronneberger et al.2015)をベースにモデルの拡張を試みる。

課題名 リンドープ非晶質炭素体に関する第一原理分子動力学計算
氏名(所属) 榎本 奨(岡山大学 環境生命自然科学研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
リンドープ非晶質炭素体(DLC)の物性に関する実験上の研究はまだ少ない。リンドープしたその物性(sp³量、密度など)の変化について一貫した結論もまだない。Ab initio Molecular Dynamics(AIMD)計算として知られる密度汎関数理論に基づく分子動力学計算では、実験パラメータを使用せずに電子レベルで理想的な条件下で材料物性を研究できる。液体急冷法は非晶質系の生成多く使用され、これに基づいて得られた結果は実験上の結果とよく一致していることが相関研究によって分かった。それ故、本研究は液体急冷法を使用して、リンドープDLCの物性をよく調べたい。

課題名 MDシミュレーションによるHDM2 N末端ドメインDisordered Lidの構造ダイナミクスの探索
氏名(所属) 渡邉 一樹 (千葉大学 薬学研究院)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
HDM2はがん抑制遺伝子p53の働きを制御し、細胞内環境保持に重要な役割を担うタンパク質である。この機能に重要なHDM2のN末端ドメインは高い運動性(ダイナミクス)を有する末端のLidとp53結合サイトを含むCoreの二つの領域からなる。これらの領域の相対的な位置関係の変化に伴って、HDM2はp53結合サイトがLidで閉塞された”Closed state”と結合サイトが開放された”Open state”の二状態間で構造平衡を取ることが示唆されている。一方で最近HDM2のN末端アミノ基と共有結合を形成し、p53を不可逆的に阻害する化合物の中で、希薄溶液中と細胞内とで異なる反応性を示すものが報告された。このことから、HDM2 N末端ドメインの構造平衡は希薄溶液中と細胞内では異なることが示唆される。希薄溶液中とは異なり、細胞内環境は分子が高密度に存在する”分子混雑環境”であり、着目分子の動態が変化することが知られている。そこで本研究では、生体分子の動態の詳細な解析ができる分子動力学計算により、分子混雑環境におけるHDM2N末端ドメインのLidのダイナミクスや構造平衡を明らかにする。

課題名 深層強化学習を用いた矩形ダクト内二次流れの熱的制御
氏名(所属) 三谷 崇志(岡山大学 環境生命自然科学研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
流体が矩形ダクトなどの角を有する真っ直ぐな流路を流れるとき、主流と垂直な面内に角へと向かう二次流れが生じる。この二次流れは、主流と比較して数%の大きさではあるが、主流の平均的な分布や熱や物質の輸送に大きな影響を与える。また、臨界レイノルズ数付近における矩形ダクト内乱流において、下壁面を加熱、上壁面を冷却することで、平均二次流れのパターンが8つ渦パターンから4つ渦パターンへと変化する。しかし、4つ渦パターンで安定化できる浮力パラメータの範囲は狭く、乱流制御には高度な制御手法が必要である。そこで本研究では、加熱量の制御に強化学習(DQN)を取り入れる。強化学習を用いて加熱量を逐次的にフィードバック調節し、二次流れの熱的制御を自動で行うことを目指す。

課題名 発散磁場中のプラズマ膨張現象を対象としたPIC-MCC-DSMCコードの構築
氏名(所属) 江本 一磨(横浜国立大学)
利用システム Oakbridge-CXWisteria/BDEC-01 OdysseyWisteria/BDEC-01 Aquarius
発散磁場中を膨張するプラズマを対象とし、PIC-MCC-DSMC法による運動論シミュレーションで数値的に解析する。本研究課題では、人工衛星の主推進として期待される磁気ノズル推進機、また核融合プラズマにおけるダイバータ周辺を模擬するGAMMA 10/PDXを計算対象とする。異なる大きさ・密度・温度となる2つのプラズマを解析することで、発散磁場中のプラズマ膨張の理論や相似則を確立することを目指す。計算対象はいずれも無衝突のプラズマであり、流体力学で記述される中性ガスの膨張過程とは異なる。無衝突プラズマ中でどのようにエネルギーが伝達されているかを明らかにし、プラズマ装置におけるエネルギー効率の向上を目指す。

課題名 磁気回転乱流における慣性領域が持つ特性のパラメータ依存性
氏名(所属) 川面 洋平(東北大学 学際科学フロンティア研究所)
利用システム Wisteria/BDEC-01 OdysseyWisteria/BDEC-01 Aquarius
本研究の目的は、「2次元分割擬スペクトル法」というこれまで高エネルギー天体物理学で用いられたことのない高精度数値スキームを用いて、ブラックホール降着流におけるプラズマ乱流の特性を明らかにすることである。これにより、活動銀河核やX線連星における降着流の理解が飛躍的に進むと期待できる。本研究で得られる結果は将来的に、国際プロジェクトEvent Horizon Telescopeによるブラックホールシャドーの観測に必要とされる理論モデルの構築や、高エネルギー宇宙線の起源を明らかにすることに繋がる。2022年度に史上最高解像度のシミュレーションに成功したが、1パラメータケースであったため、本年度は複数のパラメータについて調査をし、2022年度に得られた結果の普遍性を検討する。

課題名 Acceleration of hydrogen/air turbulent non-premixed flame large eddy simulation using physics informed neural network
氏名(所属) Rahmat Waluyo(Institute of Industrial Sciences, University of Tokyo)
利用システム Oakbridge-CX
Numerical simulation has been used as a tool for designing combustion devices. Accurate simulation of reacting flows can be achieved by using large eddy simulation (LES) coupled with detailed chemical mechanism which requires large computational cost. Recent developments on physicsinformed neural networks (PINN) offer a new approach to shorten computational time. Viability of PINN in accelerating turbulent non-premixed flame (TNF) LES is investigated.

課題名 Enhancing Japanese News Recommendation with Pre-trained Language Models and Graph-based Models
氏名(所属) Boming YANG(東京大学 情報理工学系研究科)
利用システム mdx
The project aims to design and develop an advanced news recommendation system for Japanese news articles, which provides more accurate and personalized recommendations to users. The system will leverage pre-trained language models such as BERT to extract high-level features from news articles, which will be used to make more informed recommendations. In addition, graph neural networks such as GCN will be used to model the relationships between news articles, users, and their reading history.

課題名 Forest type classification and carbon stock estimation based on multi-source remote sensing datasets and deep learning method
氏名(所属) 裴慧卿(東京大学 農学部国際森林環境学研究室(GFES))
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
The project focuses on enhancing multidisciplinary research on forest society, remote sensing images, and deep-learning techniques to achieve carbon peaking and neutrality. Prerequisites for the purpose are the accurate classification of forest types and identifying forest type based carbon stock prediction. We will address the purpose through two research topic. Forest type classification and carbon stock estimation through multi-source remote sensing datasets and novel deep learning method.

課題名 クラックを含む試料の荷重への応答の分子動力学法を用いた解析
氏名(所属) 舩橋 郁地(東京大学 理学系研究科)
利用システム Oakbridge-CX
試料に含まれるクラックの表面は、試料への荷重に対する応答として運動し、試料の示す弾性波減衰やアコースティックエミッションなどの現象を引き起こしていると考えられるが、その運動を直接観察することは困難である。そこで、原子レベルの過程を可視化できる分子動力学法によって、クラックを含む試料への荷重をシミュレーションし、クラックの運動と荷重の関係や、クラックの運動が励起する弾性波についての知見を得る。サンプルサイズを調整することによって、境界条件の影響を取り除くとともに、結果のクラックの大きさに対する依存性を調べる。これによって、分子動力学法と実験の時間・長さスケールのギャップを埋め、結果を比較できるようにすることを目指す。

課題名 Geomechanical modeling of fault stability and fluid leakage with distributed strain measurement
氏名(所属) 張毅(公益財団法人地球環境産業技術研究機構)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
Geological CO2 storage is an essential technology for mitigating greenhouse gas emissions. However, potential CO2 leakage from storage reservoirs is a major concern due to the risk of environmental and safety hazards. In this study, we are trying to develop a geomechanical model for fault stability and fluid leakage that incorporates distributed strain measurement. The model will be applied to the analysis of CO2 storage in geological formations to assess the risk of CO2 leakage through faults.

課題名 地震波形インバージョンによるマントル最下部のS・P波速度構造同時推定—地球深部の熱・化学進化の理解に向けて—
氏名(所属) 佐藤 嶺(東京大学 理学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
地球の核-マントル境界(CMB)は、固体岩石のマントルと液体鉄合金の外核が接する地球内部の最も主要な熱・化学組成境界であるため、CMB直上数100km(D″領域)は地球の熱・化学進化の理解に重要な領域である。マントルの下部熱境界層であるD″領域では部分溶融に伴う化学分化を起こすマグマが定常的に発生する可能性が高く、また典型的な沈み込み領域下においては海洋プレートの沈み込みに伴う化学組成不均質の形成が予想されている。しかし、地震波速度不均質を温度・化学組成効果に定量的に分離するにはS・P波速度構造を同程度の解像度で同時に推定する必要があったが、データセットの質や種類が異なる等の課題があった。また短周期までの正確な理論地震波形の計算は計算資源の問題から困難であった。それに加え、マントル最下部と外核最上部には構造推定においてトレードオフが存在している。本申請研究では地震波形に含まれる情報を余すことなく活用できる波形インバージョン手法と、スペクトル要素法による理論地震波形計算ソフトウェアSPECFEM3D_GLOBEを用いて外核最上部の影響を考慮したD″領域のS・P波速度構造を同時推定する。

課題名 Intelligent traffic QA system for large-scale traffic data
氏名(所属) Chen Linyao(Center of Spatial Information Science, the University of Tokyo)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
This research focus on traffic QA(Query and answer), which involves answering questions related totraffic conditions, such as road closures, traffic incidents, and trajectory information, includingdistance traveled or traffic times. we propose a new paradigm for building traffic QA systems,solving the lack of a traffic system for various queries in natural language format, which is the firstwork, to the best of our knowledge.

2023年度(インターン)

課題名 低レイノルズ数の遷音速バフェットによる三次元性への影響に関する研究
氏名(所属) 藤野 献(東京大学 大学院工学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
本研究は低レイノルズ数における遷音速バフェットの三次元性の有無を調査する研究である.低レイノルズ数において,遷音速流れのようなマッハ数の高い流れでは,流れ場が安定化し三次元性が消失することが確認されている.一方で遷音速バフェットにより生じる大規模な剥離せん断層は不安定化しやすいことが知られている.このため低レイノルズ数における遷音速バフェットによる三次元性への影響に関して調査する必要があるものと思われる.本研究では高次精度三次元圧縮性ナビエストークス方程式を直接数値シミュレーションにより解くことで,低レイノルズ数流れにおける遷音速バフェットの三次元不安定に対する影響を調べる.

課題名 Numerical modeling of mesoscale dynamics around enormous mountains on Mars
氏名(所属) HOU CHENGZE(東京大学 理学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
地球の地形とは異なり、火星のTharsis Montes地域は、惑星の大気上界に達する巨大な山脈を誇り、これが地域の大気力学と中尺度現象に数多くの未知の変数を導入しています。毎火星年の冬、Tharsis Montesに位置するArsia Monsの風下斜面では、European Space Agency(ESA)の軌道探測器が一日で数千キロメートルに伸びる広大な水氷雲を一貫して記録しています。この持続的な気象現象は、その地域の複雑な大気循環パターンを強調しています。現在の科学的な合意は、これらの巨大な山脈によって引き起こされる中尺度現象が、このような異常な気象現象の主要な原因であると指摘しています。この地域に火星探査車が到達したことがないことを考慮に入れて、我々の先駆的な研究は、過去の観測の包括的なレビューとこの地域特有の理論的なモデル構築を含みます。その後、実際の火星の地形と大気力学を利用して、この地域の複雑な中尺度現象のリアルなモデリングに取り組む予定です。

課題名 Mining User Preference Transition based on Knowledge Graph for Next POI Recommendation with Implicit Check-in Data
氏名(所属) 徐 小航(東京大学 情報理工学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
Point-of-interest(POI) recommendations often require the user's explicit check-in record, but in reality, users’ mobility is typically uncertain (i.e., imprecise check-in location and missing or incomplete check-in information). This research plans to infer users' preferences and provide POI recommendation services based on graph neural networks with implicit check-in data.

2023年度(後期)

課題名 データ駆動数値流体力学の創成
氏名(所属) 柴田 寿一(東京大学医学部附属病院放射線科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
流体を支配するナビエ・ストークス方程式の直接計算(DNS: Direct Numerical Simulation)あるいは準直接計算(LES: Large Eddy Simulation)に必要な計算コストは、レイノルズ数(Re数)の増加とともに劇的に増加する。一方、実用上重要な旅客機やロケット周囲の流体(空気)は非常に高いRe数を持つので、現在の計算機資源ではDNSは実施できず、LESも簡単ではない。ここに本研究では、2023年度JST-AIPチャレンジ採択課題(課題名:高解像度な体積画像を扱う拡散モデルの確立、研究提案者:柴田寿一)の下で応募者が提唱した高解像度体積画像を扱う拡散モデルを応用し、この困難に挑戦する。具体的には、計算の容易な比較的低いRe数の流れ場で学習した拡散モデルを用いて比較的高いRe数の流れ場を効率的に生成する。将来的には、FFVHC-ACE等の圧縮性乱流ソルバーで計算された航空機全機周りの流れ場からそれよりもさらに高いRe数の流れ場を効率的に生成することを目指す。

課題名 強固有磁場環境が太古火星の電離大気散逸に与える影響の研究
氏名(所属) 坂田 遼弥(東北大学大学院理学研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Odyssey
現在よりも強力な太陽XUV放射および太陽風に曝されていた太古火星における電離大気散逸過程に対して惑星固有磁場環境が与えた影響について、電離圏から磁気圏までを包括的に解くグローバル多流体磁気流体力学モデルによる数値シミュレーションに基づいて検証する。特に、先行研究で想定したものよりも強い固有磁場の存在下において電離大気の散逸がどのように起きるのかを検証するとともに、固有磁場を保持していた太古火星における電離大気散逸が大気損失にもたらした寄与を評価する。

課題名 Impact of electrostatic interactions on colloidal gelation
氏名(所属) Joeri Opdam(RCAST Advanced Functional Materials)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
The goal of this project is to study the gelation of charged colloidal particles, which is important in both biological systems and industrial products such as foods and cosmetics. We will use Fluid Particle Dynamics simulations that incorporate hydrodynamics in an efficient but effective manner to study gelation mechanisms of colloids for different salt and colloid concentrations. With this we attempt to show how electrostatic interactions can change gelation pathways and gel structure.

課題名 Large Language Model Enhanced News Recommender System
氏名(所属) Yang Boming(東京大学情報理工学系研究科)
利用システム mdx
In this research proposal, our goal is to leverage LLMs and GNNs as tools for feature engineering and data augmentation. We fully utilize the logical reasoning ability and open-world knowledge of large language models without imposing an excessive additional burden on the training and inference of downstream news recommendation models. By combining the use of fine-tuning LLM, we propose an elegant approach to enhance news recommendation.

課題名 アルツハイマー病特異的タウ線維のマウスにおける再構成モデルの確立
氏名(所属) 鹿野 真吏亜(東京大学大学院薬学系研究科)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
高齢化の進行に伴いアルツハイマー病(AD)の患者数は劇的に増加しているが、根本的治療法は存在しない。その要因として、AD研究のモデルマウスの妥当性の低さが挙げられる。AD病理として脳全体でのタウの凝集・蓄積が挙げられる。このタウ蓄積の拡大は認知機能低下とも相関することからAD病理の本丸であると考えられる。近年凝集タウは神経細胞内でpaired helical filament(PHF)という疾患特異的な線維構造をとることが解明された。また線維の構造特異性が病理の疾患特異性を司るとされている。しかし既存のモデルマウスでPHF形成を再現できた例は存在しない。そこで、本研究では実験の代わりに計算機の中でPHF構造を仮想的に再現し、その仮想構造に対して変異による構造形成・安定性の変化を調べる計算を行う。具体的には、分子動力学シミュレーションをベースにした自由エネルギー摂動法計算を行うことで、あるアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に変異させた際の自由エネルギー変化を求める。変異に伴うの計算を、既に別のシミュレーションから絞り込んでいる部位に対して網羅的に行うことで、PHFを形成・安定化するために有効な配列条件を同定し、患者と同一構造を持つタウ線維の再現モデルを確立する。

課題名 Long time series forest type classification and change detection in northern Japan
氏名(所属) Pei Huiqing(Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo)
利用システム Wisteria/BDEC-01 Aquarius
It is essential to better understand the long-term change in forest type and the effects of typhoon disturbance on forest structure at a local scale. Recent developments of remote sensing technology and deep learning methods allow researchers an easy and efficient approach to monitoring forest change under the management and natural disturbances. This project aims to fuse multi-modal remote sensing data with novel deep learning methods to implement the understanding of forest change under the management and disturbances to hemiboreal forest ecosystems in Northern Japan.